女性同士の"キス"を軸に、人生の分岐点で迫られる決断を描く短編ドラマシリーズ。各話のラストにキスと決断の瞬間があり、観終わったあとに「自分だったらどうする?」と問いを残す。YouTubeドラマチャンネル「ゴシップシュガー」から独立した、GL特化チャンネル。第一弾『冬桜、春雪』、第二弾『人魚の家』に続く第三弾。
ネイルサロンで働く花蓮は、誰もが振り返るような女性だ。丁寧に手入れされたネイル、隙のない立ち居振る舞い。男性客にも同僚にも「女子力の塊」と言われ、男性オーナーの湊からの好意も周囲は公然の秘密として楽しんでいる。
花蓮はそのすべてに笑顔で応えている。
誰にも言えないことがひとつあることを除いて。
花蓮はレズビアンだ。ずっと前から自分でわかっている。ただ一度も、それを誰かに言ったことがない。憧れられるたびに、モテるたびに、「そういう人」として生きてきた時間が積み重なって、今さら本当のことを言う隙間がどこにもない。
後輩の芽衣が入ってきたとき、花蓮の胸がざわついた。不器用で、すぐに失敗して、男にも簡単に騙される。でも嘘がつけない。嬉しいときは声に出るし、悲しいときは顔に出る。放っておけなかった。昔いなくなった妹に、どこか似ていたから。
芽衣は花蓮をまっすぐに慕った。「先輩みたいになりたい」と、何もかも憧れだと言った。花蓮はその言葉に応えるように、また少し背筋を伸ばした。
花蓮の唯一の趣味はワインだった。仕事帰りにひとりでグラスを傾ける時間だけが、誰の目も気にしない自分に戻れる時間だった。芽衣がそれを知って興味を持ち、二人でワインを飲むようになった。サロンでは先輩と後輩。でもワインの時間だけは、その関係が少しだけ溶ける。
最初は世話焼きだった。妹の面影を重ねていただけだった。でもいつからか、芽衣のことを考えない日がなくなった。芽衣の笑い声を聞きたくて、芽衣の隣にいたくて、それが姉のような気持ちではないことに、花蓮は気づいてしまっている。
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